道路や河川、土地など、我々の生活に欠かせないインフラは、土木・建設事業によって整備されており、インフラが整備されることによって、社会サービスへのアクセス性の確保や拡大など、生活品質の向上に繋がっています。 インフラ等を整備する事業の中でも、農業農村整備事業は、農業用の用排水施設や道路の整備、営農条件を改善するための農地整備など、農業農村におけるインフラの整備を担い、農業生産性の向上や農村地域の安全安心な暮らしを支えています。 しかしながら、インフラ整備等を担う建設業界では、人手不足や高齢化が大きな課題となっており、若手技術者等の確保に向け、3K(きつい・汚い・危険)という従来のマイナスイメージの払拭や休日の確保等の待遇面の改善が求められています。 このような中、国土交通省による“建設業働き方改革加速化プログラム”の取り組みが平成30年から開始され、「i-Construction(アイ・コントラクション)」の推進等を通じた建設生産システムのあらゆる段階におけるICTの活用や、コンクリート二次製品の活用などにより、人手不足や技術経験の不足等を補い、工事日数の短縮や品質の向上など、生産性の向上に向けた取り組みが官民一体となって進められています。
農業農村整備事業においても、最新技術の導入や生産性向上の取り組みが進められており、今後、宮城県の農業用ため池改修工事等においても活用が期待できる新技術工法等についてご紹介します。
従来の締固めた土の密度や含水比等を点的に測定する「品質規定方式」を、まき出し厚の適切な管理や締固め回数等の面的管理を行う「工法規定方式」にすることで、品質の均一化や過転圧の防止等、さらには締固め状況の早期把握による工程短縮を図ることができます。 施工者においては、施工管理について、施工管理データの取得によりトレーサビリティが確保されるとともに、高精度の施工やデータ管理の簡素化・書類の作成に係る負荷の軽減等が可能となります。 また、発注者においては、従来の監督職員による現場確認が施工管理データに数値チェック等で代替可能となるほか、検査職員による出来形・品質管理の規格値等の確認についても数値の自動チェックが可能となるなどの効果が期待されています。
参考:国土交通省「TS・GNSSを用いた盛土の締固め管理要領」より
出典:国土交通省近畿地方整備局「TS・GNSSを用いた締固め管理技術の手引き【施工者用】」P8
農林水産省官民連携新技術研究開発事業より
近年、ため池の老朽化等による堤体の不同沈下や地震動の影響等により、底樋周辺部から漏水が発生している事例が報告されています。底樋周辺部からの漏水はため池の安全性を大きく損なうことから、ため池の安全確保のため、底樋の安全性・耐震性の向上が求められていました。そこで、平成28~30年度にかけて、農林水産省の官民連携新技術研究開発事業として、「プレキャストコンクリート製ため池底樋の耐震性向上技術に関する研究開発」が進められ、「柔構造耐震性プレキャスト底樋」が開発されました。
柔構造耐震性プレキャスト底樋は従来のコンクリート(剛)構造底樋と比較して優れた耐震性能を有しており、ため池の強靭化を進める上で重要な役割を果たすものと期待されています。
https://www.maff.go.jp/j/nousin/sekkei/kanmin/kanryou.html「番号86」参考:農林水産省「プレキャストコンクリート製ため池底樋の耐震性向上技術に関する研究開発」より
ため池堤体の改修には、強度や遮水性に優れた良質土が必要となりますが、ため池周辺での良質土の入手が困難になってきております。一方、多くのため池で堆積が確認されている底泥土は、貯水容量の減少や水質悪化など、ため池機能の阻害や低下の原因になっているほか、含水比が高く処理費用も高額となることなどから、環境面や経済性の観点からも積極的に再資源化する技術が求められていました。 本工法は、堤体掘削土や底泥土に繊維質系泥土改良材(ボンファイバー)と固化材を投入・攪拌するもので、クラックの発生抑制・耐久性・耐浸食性を有する高機能地盤材料として、ため池改修のための人工築堤材として適用されます(株式会社森環境技術研究所 ボンテラン事業部資料より一部抜粋)。 ※「土木技術十二選」選定技術(JSCE公益社団法人 土木学会 学会誌編集委員会) ※「平成23年度建設技術フオーラム」(国土交通省関東地方整備局主催)で、「東日本大震災で効果のあった技術」に選出
農林水産省官民連携新技術研究開発事業より
ため池の代表的な築造工法の一つに「前刃金工法」があります。この工法は、ため池堤体上流側に透水性の低い土の層を構築し堤体の遮水安定性を確保する工法ですが、遮水基準を満たす良質な刃金土をため池近傍で確保することが困難になってきております。 近年、前刃金工法の代替工法として、遮水シート(ゴム製など)やベントナイトをシート状に加工した製品、ベントナイト混合土などを活用した事例もありますが、「薄層段切り工法」も、前刃金工法の代替工法の一つとして開発されたものです。 同工法は、ため池堤体上流法面において、段切りした下地にベントナイト系土質材料を敷設し遮水層を構築していく工法であり、透水係数を刃金土よりも低く設定することで、設置する遮水層の厚さを薄くすることができます。 さらに、掘削基準面の岩露出や下地の凹凸の激しい場所などシート工法が適さない現場にも有効とされ、施工性の向上とコスト低減が期待されます。
官民連携新技術研究開発事業の成果紹介 ARIC情報大144号 令和4年1月発行
農林水産省官民連携新技術研究開発事業より
ため池の改修に当たっては、築堤に適した土の確保や堆積底泥土の処分の検討などが必要ですが、求められる遮水性や強度を持つ築堤用土の入手や、堆積底泥土の捨て場の確保等が困難な場合があります。 そこで、これらの課題解決等に向けて「砕・転圧盛土工法」が開発されました。本工法は底泥土などの堆積土をセメント系固化材により固化改良することで、要求される品質の築堤用土の調製が可能なことから、築提用土の確保や堆積土の処分、品質や環境などの施工上の制約条件に関わらず、工事の効率化や迅速化、コスト縮減などの効果が期待されます。
https://www.maff.go.jp/j/nousin/sekkei/kanmin/kanryou.html「番号8」受付日時
火・木曜日 9:00 ~ 12:00 /
13:00 ~ 16:00
場所:〒980-0011 宮城県仙台市青葉区上杉2丁目2番8号
※祝日、休日、年末年始(12 月29 日~翌年1月3日は除く)
※来所の場合、要予約になります。