ため池の構造
ため池は、水を溜める堤体と豪雨時に洪水を安全に流下させるための洪水吐、そして灌漑用水を取り入れるための斜樋や底樋といった取水施設等で構成されています。
全国にあるため池の約7割が江戸時代以前、又は築造時期が明らかではない古い施設であり、堤体土質、品質・性能が不明なため池が多く、また、経年による堤体の強度低下等の老朽化や洪水吐が整備されていないなど防災上の懸念があります。
そのため、ため池の構造を把握し、ため池の状況に応じた点検や補修等の維持管理、改修が重要となってきます。
堤体(堤防)について
近代のため池の堤体(堤防)は、細粒分の多い土や粘土分の多い土をタイヤローラー等の機械によって締め固めた土木構造物です。上流側(貯水池側)の堤体には「コア(刃金土)」と呼ばれる特に水を通しにくい土質の土が使われており、貯留している水を遮水します。 また、上流側の堤体法面には貯留水の波による浸食を防ぐため、張ブロックが設置されています。
老朽化や地震等によって堤体の強度が低下していると、漏水の原因のひとつとなります。豪雨時に貯水位が急激に上昇すると堤体内の水圧も上昇し、水が逃げ場を得ようと上流部から下流部(漏水等がある強度が低下した箇所など)にかけてパイピングホールと呼ばれる貫通した穴を発生させることがあり、この開口した穴からため池の決壊(浸透破壊)に至る場合があります。
洪水吐について
洪水吐は、豪雨時や台風の時に貯留させた水がため池の堤体を越えないように、流入した雨水を安全に流下させるための施設です。土砂や流木、ゴミ等で洪水吐が閉塞されていると豪雨時に貯水位が急激に上昇した際、水が堤体を越えてしまう「越流」が発生します。越流が発生すると越流水によって下流部の堤体法面が浸食され、非常に危険な状態となり、ため池の決壊(越流破壊)に至る恐れがあります。
取水施設(斜樋・底樋)について
ため池の取水施設とは、斜樋や取水塔といった取水量を調節する取水部と底樋や取水トンネルといった取水を用水路等に導水する導水部によって構成されています。
斜 樋
斜樋は上流側の法面に設けられ、取水ゲートや栓が各段に設置され、水位に応じて水面付近の温かい水を取水できる構造となっています。斜樋は大きな支持力を有する地盤を必要とせず、施工が容易であり、構造的にも安定で維持管理も容易な施設です。
底 樋
底樋は斜樋から取水した水を場外の用水路に導水する施設であるとともに、ため池を空にするための排水施設としての役割も担っています。取水トンネルに比べ工事費が少ない反面、ため池の底部に敷設されるため、堤体の土圧や地震等に不利がありますので、定期的な点検が重要となります。
ため池の被災メカニズム
参考例としてため池の決壊メカニズムについて掲載しています。
(出典:農林水産省「ため池管理マニュアル」P5~P6)
台風や豪雨によるため池の被災例
被災形態 | 被災メカニズム |
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豪雨や洪水吐の閉塞により、貯水位が急激に上昇し、堤体を越えて流れ出すと、 下流法面を浸食することによって、破壊する場合がある。 また、貯水位の上昇により、堤体内の水圧も上昇し、強度が低下して破壊する場合がある。 |
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貯留した水と降雨が堤体の中に浸透して、堤体内部の水分量が増加し、 堤体の法面部の強度が低下することによって、法面部ですべりが発生し破壊する場合がある。 |
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堤体内部が劣化して、水を遮る機能が低下すると、 貯水位が上昇した時に堤体の中の水圧も上昇して強度が低下し、破壊する 場合がある。 また堤体内に上流から下流まで貫通した水みちが発生し破壊する場合がある。 |
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上流域の山林等の崩壊により発生した土石流等の流入により堤体が破壊される場合がある。 |
地震によるため池の被災例
被災形態 | 被災メカニズム |
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堤体の頂部などにクラック(亀裂)が発生する場合がある。 堤体の上下流方向に生じるクラック(亀裂)は水みちとなることがあり、特に注意が必要である。 |
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堤体の形状をほぼ保ち、クラック(亀裂)などを伴いながら堤体が沈下する場合がある。 多くは軟らかい地盤で発生している。 |
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堤体法面の上部が沈下し、下部がはらんで変形が生じる場合がある。 | |
地震動により堤体の法面にすべりが発生する場合がある。 | |
堤体や地盤が大きく変化し、崩壊する場合がある。 決壊に至ることが多く、堤体や基礎地盤の液状化によるものと考えられる。 |
ため池管理者の方の相談窓口
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