非常時の対応について
豪雨や地震等いった自然災害によりため池が決壊した場合、浸水被害だけではなく人命にまで及ぶ恐れがあります。
そのため、自然災害に備え、ため池の監視や緊急点検等の対応に加え、市町村、消防署、自治会等といった関係機関との連絡体制の整備が重要となります。
情報連絡体制の整備
ため池管理者や市町村の担当者が、ため池に以下の兆候・被害を確認した場合は、速やかに市町村の担当部課、関係集落、消防団等に急報されるように体制を整備してください。また、緊急時に確実に実行されるよう、整備図やマニュアルを作成し、情報を共有してください。特に下記2~3については決壊の恐れがあるため、市町村の担当部課に報告し、緊急放流などの応急対応を検討してください。
- 水位が危険水位に達することが予想される
- 危険水位を超える上昇水位
- 洪水吐が流木や土砂等で閉塞されている
- 堤体に漏水や変状がある又は拡大している
ため池の監視等にあたっては
遠隔監視カメラを使用するなど
作業員の安全確保を第一としてください。
大雨・洪水時の対応
事前放流による低水位管理の実施
梅雨前線や台風発生等の豪雨が予報される場合、ため池の貯留水を事前に放流し、水位を下げることにより下流域への雨水の流出を遅らせ、住宅や農地への浸水被害を軽減させることができます。事前放流することにより、浸水被害軽減のほか、ため池の決壊を防止する効果も得ることができます。
ただし、事前放流のタイミングは、放流施設の種類や能力によって水位低下開始のタイミングが異なり、気象状況や水路の溢水等の下流の状況にも十分配慮しなければなりません。事前放水のタイミングは市町村の担当部課と相談し、併せて放水量の設定や管理規定等の作成を行ってください。
以下は実施された事前放流による水位低下開始タイミングの事例です。
実施県 | 水位低下開始のタイミング |
---|---|
山形県 | 降雨に関する注意報又は警報が出た場合に実施 |
ため池への流入量が30㎥/sを超えた場合に実施 | |
山口県 | 警報等が発令された場合 |
福岡県 | 町役場の雨量計で20mm以上を観測した場合に実施 |
兵庫県 | 台風等の豪雨が予報される3日前から実施 |
参考:農林水産省
「ため池の洪水調節機能強化対策の手引き」P18
期別放流による低水位管理の実施
期別放流とは、梅雨や台風等といった豪雨とは別に、非灌漑期や灌漑期といった期別毎に水位を設定し管理する取り組みです。取り組み方法は次のとおりです。
- 非灌漑期は完全落水又は低水位で管理する
- 灌漑期は必要数量から期別に推移設定を行い、空き容量を確保する
関連ページ
以下は実施された期別放流の期間及び設定水位の事例です
実施県 | 水位低下開始のタイミング |
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秋田県 | 7月の梅雨時期と9月の台風時期(灌漑終了後)に低水位管理 |
堆砂排除を目的として、非灌漑期の一時期に貯水量を0とする。その後は1/3程度の水量で管理ため池への流入量が30㎥/sを超えた場合に実施 | |
山形県 | 非灌漑期に低水位管理 |
耐震性能不足によるため池決壊リスクの軽減を目的として、貯水率 80%(管理可能な斜樋1段目:満水位より 40cm 低下)を目安に設定 | |
岐阜県 | 7月~9月までの期間を制限水位で管理 |
防災ため池としての機能を十分発揮できる制限水位(洪水期127.00m、非洪水期129.50m)を設定 | |
滋賀県 | 落水の10月から概ね5ヶ月程度は低水位管理。貯水開始は毎年3月上旬に実施 |
受益者の要望と堤体点検の結果に基づき、用水確保に支障のない1/3程度の水位で設定 | |
福岡県 | 過去の水位実績より管理組合と協議し、7月から9月は水位を50cm低下 |
参考:農林水産省
「ため池の洪水調節機能強化対策の手引き」P21~P22
緊急放流及び応急対策
緊急放流
大雨や地震等によって堤体に漏水や亀裂、法面崩壊等の被害が発生している場合は、ため池の決壊による二次被害を防ぐため緊急放流を実施し、速やかに安全な水位まで下げてください。
ただし、急激な水位の低下による堤体のすべりや下流排水路から水が溢れないよう、放流量に注意が必要です。
また、緊急放流を実施する場合は、下流域の住民及び市町村の担当部課等関係する機関と十分な連絡調整を行ってください。
応急対策
ため池の堤体に漏水や亀裂、陥没、はらみだし等といった変状が確認された場合は、市町村及び関係集落、消防団等へ速やかに連絡し、堤体の漏水箇所や変状が確認された箇所に土嚢積み、押え盛土、ブルーシート掛け等応急対策を行ってください。
ただし、ため池の水が堤体を越水しそうな場合や法面が崩れている場合は、下流側から堤体に近づくことは絶対にしないでください。
大雨や地震発生後の対応
緊急点検の実施
防災重点ため池に指定されているため池は、警報等が解除され次第、速やかに緊急点検を実施してください。
また、緊急点検後、ため池に異常がない場合でも市町村担当部課に報告をしてください。
ため池の被害が懸念される主な目安
- 豪雨…時間雨量20mm以上、日雨量80mm以上
- 地震…震度4以上は提高15m以上の防災重点ため池
震度5弱以上は全ての防災重点ため池
緊急点検時の注意点
- 台風や大雨、地震発生の際は、自分自身の安全を確保する
- 警報発令中は、ため池には近づかない
- 警報が解除されてから緊急点検を実施する
- 緊急点検を実施する際は、身の安全を確保し、必ず2人以上で行動する
継続点検の実施
地震直後に被害が認められない場合でも、一定期間を経過したあとに被害が発生するケースがあります。地震発生後1週間を目安に緊急点検と同様の目視点検を実施してください。
ため池管理アプリ
(MEAP)の活用
国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構(以下「農研機構」という。)よりスマートフォン用アプリ「ため池管理アプリ(MEAP)」が公開されました。
ため池管理アプリ(MEAP)の特長
- 点検報告を現地でリアルタイムに行える
- ため池防災支援システムと連携し、情報の共有と迅速な初動対応が可能
- プッシュ通知機能で、ため池管理者に対して直接呼びかけが可能
本アプリをスマートフォン(iOS、android対応)にインストールすると、緊急点検の際、現地での点検報告がリアルタイムで可能となります。山間部などの通信環境が不安定な場所では、点検報告がアプリ内で保持され、通信環境が回復した際、スムーズに報告が行えるよう設計されています。
また、本アプリは国が行政機関向けに運用する「ため池防災支援システム」と連携し、点検結果や被害情報を同システム上で即座に把握することが可能となり、迅速な初動対応が行えるようになります。
さらに、台風接近等による豪雨が予想される場合は、アプリのプッシュ通知機能を活用し、ため池管理者に対して直接呼びかけを行い、豪雨に備えた事前点検や低水位管理について迅速な対応が可能となります。
関連ページ
- ため池防災支援システム(農研機構公式サイトへ)
- プレスリリース(研究成果)ため池管理アプリ(農研機構公式サイトへ)
ため池管理者の方の相談窓口
受付日時
火・木曜日 9:00 ~ 12:00 /
13:00 ~ 16:00
場所:〒980-0011 宮城県仙台市青葉区上杉2丁目2番8号
※祝日、休日、年末年始(12 月29 日~翌年1月3日は除く)
※来所の場合、要予約になります。